尾鷲ってどんなところ?――海とつながる尾鷲の林業

尾鷲ってどんなところ?――海とつながる尾鷲の林業

全国有数の多雨地帯として知られる、三重県尾鷲。年降水量のランキングでは、毎年上位にその名が挙がります。西南北をぐるりと囲む山林は土地面積の9割に及び、南側のリアス式海岸が面するのは、黒潮の流れる熊野灘。山々を背に、南から吹くあたたかい風を受けるため、恵みの雨が降るのです。

そんな雨が育むのが、「尾鷲ヒノキ」。

急峻で痩せた土地で、長い年月をかけゆっくり育つ尾鷲ヒノキの特徴は、赤みの部分が多く、ぎゅっと詰まった緻密な年輪があるところ。赤みのある木材は油分が多く含み抗菌性・耐久性も高く、何層にも重なる年輪によって強靭さもあり、その良質さは今も昔も高く評価されています。


尾鷲ヒノキのはじまり

尾鷲の林業の発端は、江戸時代に遡ります。傾斜が急なため農地が少なく、紀州藩が林業を奨励したことから林業地として栄えるように。寛永元年(1624)に人工造林が行われ、海上交通により全国各地へ木材が運ばれていきました。

なかでも関東方面との取り引きが多く、特に評価を高めたのは、大正12年(1923)の関東大震災。被災地では尾鷲ヒノキを柱に使った家屋の倒壊が少なかったことが分かり、優れた耐震強度を持つ材だと一躍その名が広まったのです。

高品質な尾鷲ヒノキを持続的に生産するため、尾鷲では適切な密度管理を行い、独自の伝統技術が代々受け継がれてきました。そうした活動や、海岸線まで植林されるヒノキなどの景観が評価され、平成29年(2017)には農林水産大臣が認定する「日本農業遺産」に「尾鷲ヒノキ林業」が認定されました。日本三大人工美林*の一つにも数えられています。

*日本三大人工美林:吉野スギ(奈良)、天竜スギ(静岡)、尾鷲ヒノキ(三重)


豊かな山には、豊かな海あり

尾鷲の山は人工林のため、植えっぱなし・伐りっぱなしではなく適度に伐り、森のなかに光を差し込ませ、また植林をするといった「人の手入れ」が必要です。きちんと手入れをすることで、木も土も健やかな森になり、いい木が育つことはもちろん、その森の麓の海も、栄養があり魚がよく集まる豊かな漁場になります。

山の養分は川を通じて海に流れ、海面から蒸発した水蒸気が雲となり、雨を降らして山を再び潤し木々を育みます。古くからつづく山と海の循環があり、豊かな山と豊かな海は、互恵関係にあります。尾鷲の誇る木製品、山と海の景観、豊かな海鮮物の食文化。尾鷲を語るには、山と海のつながりは欠かせないのです。

尾鷲にお越しになる際は、熊野古道も通る「天狗倉山(てんぐらやま)」から海を眺めたり、尾鷲駅からほど近い「尾鷲港」、隣町の「九鬼港」などで海鮮を味わったり、山と海を体感できるスポットでぜひ尾鷲の恵みをご堪能くださいね。